◆ イギリスの田舎道をドライヴ ◆

(Country drive across England)

Hedges in winter


◆ レンタル手続き、こんなもの?

 友人の家が車でしか行けないところにあったため、今回初めて海外での運転にトライしました。レンタカーの予約は日本にいるうちに。非居住者向けの特別割引アフォーダブル料金が適用されます。HertzでワゴンタイプのAT車を予約。Birmingham空港で借りてロンドンで返す乗り捨て、One way rentalを申し込みました。

 Birmingaham空港には夜着いたのですぐ近くのNovotel Birmingham Airportで一泊。(このホテルも設備がよく朝食もおいしくおすすめです。朝食付き一部屋75ポンド。)

 翌朝皆にはホテルで待っててもらい、夫と二人空港のレンタカー受付まで。これが意外とそっけなくて、海外初ドライヴの我々は戸惑いました。予約書類を見せるとろくな説明もなくぽんぽんとなにやら打ち込んで料金表を差し出しサインしろと言うのですが、聞いていた値段よりも100ポンド以上も高い料金。一項目一項目聞き出してチェックしたところ追加ドライバー料金、各種追加保険料金、ガソリン空タンク返し料金などが含まれていることが(なんとか)判明。各種保険の中には個人の傷害保険も含まれこれは旅行傷害保険をかけてきているので不要。ガソリンも満タン返しなら54ポンドも安くなるためこれも満タン返しを選択することに。(もっともイギリスのガソリンの高いのにはびっくりしました。リッター150円もするんです。なので54ポンドというのもそう高い値段ではないんでしょうけど。)

 さらにロンドンで返却するハーツの営業所を聞くと「どこにでもある」とだけ。それはないでしょう。「住所くらい教えて」と言うと、ごそごそと探してやっと住所だけ羅列した紙を渡してくれました。仕方ない、手持ちの地図でこの住所から探し出すしかないか〜。このやりとりの間ずっと他には一人の客も来ず、暇そうだったんだからもっとていねいに教えてくれてもいいのにね〜。

 結局車の受け渡しも鍵だけカウンターでもらって、離れた駐車場に停めてある車を自分たちで探し出すという方式でした。(海外ではこれが当たり前?)キーを差し込んだ途端、すさまじい盗難防止音が鳴り響き、本来ならどうしてそんな音が出たのか聞き出したかったのですが、あのそっけない女性に聞いてもわかるとも思えず、取説で解明することにしてとりあえず出発。その後何度かこの音には悩まされ、英文の取説をひっくりかえしとっくりかえしやっと、キーを差し込んだまましばらくエンジンをかけないと盗難防止音が鳴ることが判明しました。その解除はキーに付いている解除ボタンを押すのだそう。日本のレンタカーだったら借りるときにそんな説明してくれるのにね〜。結論。レンタカーを借りる場合、日本のようないたれりつくせりのサービスはありません〜。

 (付録:ところで、営業所探しからしなくちゃと思っていたレンタカーの返却は結局思いもかけず簡単な結果に。ホテルで「これから返却に行く」と言ったら「ここで出来る」とのこと。コンシェルジュに鍵と契約書類のコピーを渡したらニコっと笑って「フィニッシュ」あのときのコンシェルジュの笑顔、忘れられません〜。前夜ロンドンに入るのに迷いに迷った私達、また営業所探しに奔走するのか〜と覚悟の朝だったのですが、このフランス語なまりの英語を話すコンシェルジュさんが、天使に見えました〜。本格的ホテルなら、レンタカー返却できるのですね。知らなかった〜。ただしホテル返却料金15ポンド追加です。)
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◆ 理想的、まるで教習所ミニコース

 やっと借りられたものの海外運転初めてとあっては、やっぱり練習してみないことには街に繰り出せません。幸いにもホテル周辺がちょうど上手くまるで教習所のコースのようにラウンドアバウトあり横断歩道あり信号機あり合流点ありのあまり交通量も多くない小さな道路で、まずは夫がここを3回、その後私も3回廻って練習しました。

 「はいジグザク模様が出てきたから行く手に横断歩道あり」(横断歩道の手前には予告の白いジグザグ模様が車道脇に付いています。)
 「歩行者いるから止まって」(イギリスの歩行者は絶対優先。横断歩道で歩行者が待っていたら必ず車は止まって歩行者を渡らせます。、、、とはいえど、オックスフォード、ストラトフォードアポンエイボンなどの観光地ではあまりに歩行者が多いせいか、結構車も発進していましたけど。)
 「はいラウンドアバウト、右から来る車あり!」(これに関しては別項目で詳しくご説明します〜。一言では語れないため、、、。)
 ここでしっかり練習でき、私達にとっては手近にこんな理想的なミニコースがあって、つくづく有り難かったです。(本当の道路なんですが。)

 このミニコースでもうひとつ必死で練習したこと。イギリスの車は右ハンドルなのになぜかワイパーのレバーは右、方向指示レバーは左と日本とは逆に付いていて、意識はしていても長年培った性、ついうっかり曲がるときにワイパーを回してしまうのです。ただしラッキーなことに、この旅行の間中ずっと雨模様だったために、間違ってワイパーを回してもそんなにドジにはみえなかったのでした。

◆ ラウンドアバウトは便利で安全

 イギリスの道でまず一番特徴的なのは、なんといってもあのラウンドアバウトではないでしょうか。私達も事前に現地の友人からラウンドアバウト内の内回り外回りなどのこつを教わったりして心の準備はしてあったのですが、やっぱり現地で体得することがいろいろありました。
 ラウンドアバウトはどこも時計回り。右方向から来る車が優先であるため右の車に注意してラウンドアバウトに突入するのですが、左の車よりもこちらが優先だと知っていても慣れるまではつい左の車が止まることを確認してしまいます。(我々のような初心者もいるためそれも必要なんですけどね〜。)だんだん慣れてくると、たとえ右から入ろうとしている車がいても、ラウンドアバウトのさらに奥から車がやってくる場合、その右の車はラウンドアバウトに入っては来ないためこちらが入る余地がある、なんてこともわかってきました。

 ラウンドアバウトで気に入ったのは、曲がる場所がわからなくてもいつまでも廻っていられること。何より一番気に入ったのは、日本の交差点と違ってUターンできること!慣れないイギリスの道で何度か迷ったので、道を間違ったら次のラウンドアバウトでUターンすればいいんだと学べたことは大収穫でした。(何度も活用させていただきました、、、ということは何度も迷ったということ、、、。)

 さらにラウンドアバウトに入るときはどちらにしろ減速するため、接触事故があったとしてもそんなに大した事故にはなりそうもなくて安全性が高そうでした。日本の交差点だったら青信号をいいことにすごいスピードで交差点に突入する車がありますよね〜。
 こんなに便利で使い勝手のいいラウンドアバウトですが、さすがロンドンの街中にはほとんどなく、交差点は信号機でした。やっぱりある程度交通量の少ないところに限定されるのでしょうか。右から来る車がとぎれないと、いつまでたってもラウンドアバウトに入れないものね〜。ということは日本ではたいがい無理なんだなぁ、きっと。

 ラウンドアバウトで面白かったのは、住宅地のような小さな道でもしっかりとラウンドアバウトになっていて、中には廻る余地すらなさそうな四つ角でさえ中心点が書いてあってほとんど形骸化しているようなものもあったこと。どうしてもそうしないと落ち着かないんでしょうか。
 そしてM道路という高速道路でさえ、ラウンドアバウトの基本的概念でインターチェンジが設計されていること。地図をみるとまるでアラベスクの唐草文様のようにインターチェンジがぐるぐると幾何学模様を描いています。高速を走っていてまっすぐ行きたいのに廻らされて方角が狂い、迷ってしまったこともありました。ん〜こんなときは便利そうで不便だな〜って思ったのだけど。

Hedges in winter
◆ イギリスのヘッジは、○百年の歴史

 前回イギリス旅行をしたときに特に印象深かったのがこのヘッジ(生け垣)です。車一台やっと通る細い田舎道の両側に城壁のようにそびえる緑の大壁。ヘッジを構成する植物も様々で、そこにさらにブラックベリーなどのキイチゴ類、ハニーサックルなどのツル植物が我が物顔に巻き付いて、高さ2mはあるでしょうか。季節が夏だったせいもあるのでしょう、みっちりと堅固な緑の鎧に覆われたヘッジは奥が垣間見えるような隙もなく、ときにはその緑が上空で両側から手をつなぎ屋根を形作っている場所もありました。イギリスの田舎道を走るとこんな緑の生け垣が延々ととぎれることもなく続いているのです。

 「英国ガーデニング物語」(チャールズ・エリオット著)という本によれば、このヘッジはイギリス全土で30万〜50万マイルもあるのだとか。しかも100年、200年で形成されてきたものではないようです。1600年代に始まる名高いイギリスの囲い込みの時期に形成されたものですら全体の半分以下にすぎないそう。エリオット氏が面白可笑しく書くところによれば、マックス・フーパーというイギリスの植物学者が紹介したヘッジの植物による年代測定法、フーパーの法則を適用したところ、なんと700年800年、なかには1000年も前に誕生したヘッジもあるのだとか。

 なるほど日本の古いお屋敷でも丈高い立派な生け垣を目にすることがありますが、歴史と(京都あたりには1000年昔の生け垣があるかも?)、なんたって距離が違います。そういえばニュージーランドやオーストラリアに行ったとき見た景色もイギリスとほとんど変わらない田園風景でしたが、大きな違いそして決定的違いはこのヘッジでした。18世紀になって入植が始まったこれらの国には、ほとんど印象に残るようなヘッジはなかったのです。イギリスのヘッジには歴史の重みがあります、それを形成する植物のようにずっしりと密度濃く。

 前回、夏の盛りにイギリスを訪れたとき友人の車に乗って田舎道をゆくと、行く手にのろのろと進む大型の車が現れました。田舎道をふさぐほどのおおきな四角い車なんですが、よく見ると両脇のヘッジを刈り込みながら進んでいるのです。まるで雪国の雪の壁を削る除雪車のよう。(、、ったって私達雪国の人間にしかわからないでしょうけど。)抜かすこともできず、それにさっぱりとしたヘッジを見るのも心地よく、おとなしくその車の後ろを分岐点までしばらくついていきました。ヘッジを刈る専用車が定期的にこんな風にのんびりと刈り込んでいく、なんて素敵な風物詩でしょう。もっとも刈り込まないと夏のヘッジは伸び放題で見通しも悪くなるんです。

 実際、そびえるようなヘッジで両側を縁取られた車一台しか通れないこんな道を運転すると、カーブの先から対向車が来ないかとヒヤヒヤものです。友人は慣れたもので結構なスピードで走るのですが。今回は冬だったため、夏のうっそうとしたヘッジのイメージはなく、ところどころの裸木からヘッジの奥も透けて見えるようでしたが、それでもヒイラギなどの常緑樹で構成されているものが多かったように思います。
 前回あまりに印象的だったので、さんざんこのヘッジの話を夫にしていたのですが、「話の通りだった」と本物を目にして夫も感無量でした。シュロップシャーという古くから上質の羊毛がとれることで有名な地域にありウェールズの国境いに近い友人の家は、ことさらこの歴史あるヘッジの多い地域だということもあるようですが。

Big ben
◆ ロンドンの道は魔物

 レンタカーは最終的にはロンドンに行って乗り捨て、と安易にプランを立てた私達。後で何度もイギリスで運転している人からも「ロンドン市内を運転したなんて勇気あるなぁ」と感心されました。それがいかに無謀なことであったか、そして同時によくたどり着いたなぁといまではつくづく思います。はぁ〜。
 一方通行路ばかりでしかもくねくねと勝手気ままなところで曲がり(としか思えない)、南へ下ろうとしたのにふと気づくと北の住宅地を走っていたんです、本当に。生き物のようだわ〜。しかも私達にはロンドン中心部の一方通行路がしっかり書き込まれた地図もあったのに。

 あとになって地図をあらためて検討すると、迷った一番の原因がNew Bond Streetだったことが判明しました。ホテルのすぐ裏のNew Bond Streetまで行っていたのに、なぜかホテルにはどうしても近寄れなかったのです。我々はNew Bond Streetを南に下ってPiccadillyに入ろうとしていたのですが、New Bond Streetが自然とOld Bond Streetになっているかのように地図では見えたのが実は繋がってはおらずL字路で、従ってPiccadillyにも通じてはいなかったのでした。手持ちの地図ではそこまでわからなかった。その後路線復帰をしたくても、一方通行路のためにあらぬところをぐるぐると1時間半も廻らされてしまったのでした。さすがにしまいにはホテルには永遠にたどり着けないのではないかとまで思いました。その場に車を乗り捨てたかった。でもスーツケース2個と5人の人間をどうしよう〜。

 最終的にはなぜか我々は北の住宅地にいて、そこの道がA5だと判明。A5からPiccadillyに入ればそんなに難しくはなさそう、と最後の力を振り絞ってようやくなんとかホテルにたどり着くことができました。でもこれもお正月休暇の元旦で、ロンドンも比較的空いている時期だったからまだ2時間弱迷っただけでたどり着けたような気がします。混んでいる時期だったら、まだまだ何時間もロンドンの街をさまよっていたことでしょう。
 ロンドンの道って魔物です。しみじみと実感しました。ロンドン市内へ車で行くのはもうこりごり〜。

Harrod's department store

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